コラム

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは|iDeCoとの違いや特徴をわかりやすく解説

給与・社保・人事労務

「企業型DC」とは、企業が掛金を積み立て、その資金を元に従業員が自ら資産運用する福利厚生制度です。加入すれば、口座手数料の支払いを免れたり、税制優遇措置を受けられたりするなど多くのメリットが得られますが、利用方法やデメリットも把握しておかないとうまく使えないかもしれません。

そこで本記事では、企業型DCの種類や特徴、iDeCoとの違い、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。本記事を読めば、企業型DCが自身の企業に向いている制度なのかどうかわかりますので、参考にしてください!

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは

「企業型DC」とは、勤務先の企業が掛金を毎月積み立てし、その拠出した資金で従業員が年金資産を運用する福利厚生制度です。企業型DCには、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。

<企業型DCの種類>

  • 従業員が企業型DCに自動的に加入する
  • 従業員が企業型DCに加入するかどうかを選択できる

企業型DCを導入している企業であっても、必ずしも強制加入になるわけではありません。拠出された資金を企業型DCの掛金にするか、給与に上乗せして受け取るかを従業員自身で選べるパターンもあるのです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)との違い

類似した制度に個人型確定拠出年金「iDeCo」がありますが、企業型DCとはどのような違いがあるのでしょうか。

企業型DCとiDeCoで異なる点をまとめましたので、ご覧ください。

<企業型DCとiDeCoとの違い>

  • 掛金の拠出主体
  • 加入対象者
  • 毎月の掛金の上限金額
  • 手数料の負担先
  • 運用商品

掛金の拠出主体

iDeCoは加入者が自ら拠出する必要がありますが、企業型DCでは勤務先の企業が掛金を拠出してくれるため自己負担なしで始められます。

加入対象者

企業型DCの加入対象者は、企業に勤務する従業員だけに限られます。一方、iDeCoは自営業や公務員、専業主婦なども利用できます。

毎月の上限金額

毎月の掛金額は上限が異なり、企業型DCの場合は最大55,000円、iDeCoは最大68,000円です。

手数料の負担先

運用にかかる手数料は、企業型DCが勤務先の企業、iDeCoは従業員自身が負担します。

運用商品

企業が事前に選定した運用商品から選択する企業型DCに対して、iDeCoは金融機関が用意している運用商品から選ぶことが可能です。

企業型DCの5つの特徴

企業型DCに関する主な特徴を5つピックアップしました。

①対象者は公務員を除く厚生年金被保険者

企業型DCに加入するには、導入している企業に在籍していることだけでなく、厚生年金被保険者であることも条件となります。なお、厚生年金保険の被保険者でも公務員は対象外とされており、第2号厚生年金被保険者や第3号厚生年金被保険者も加入できません。

企業型DCの対象者は、導入済み企業の従業員かつ「第1号厚生年金被保険者」か「第4号厚生年金被保険者」に該当する人だけですので注意しましょう。

②拠出額の上限が決まっている

企業型DCは、以下のように拠出額の上限が事前に決まっている点も特徴です。

<拠出額の上限>

  • 厚生年金基金など別の企業年金を実施している場合:27,500円
  • 厚生年金基金など別の企業年金を実施していない場合:55,000円

このように、企業型DCの拠出額の上限は他の企業年金の加入状況によって変動します。

③加入者が運用する

企業型DCは、企業が拠出した掛金を元に、加入者である従業員が預貯金や投資信託、保険商品などの中から、金融商品を自ら選択して運用する方式になっています。そのため将来受けられる給付額は、従業員の運用実績によって変動します。

④加入を「選択制」にしている企業もある

企業型DCを導入済みの企業で、従業員は企業型DCに自動的に加入するケースが多いです。しかし、すべてのケースで強制加入するわけではなく、加入を「選択制」にしている企業も存在します。

加入しない場合は、掛金分を毎月の給与に上乗せされるため、短期的に見るとメリットに感じる人が多いでしょう。しかし企業型DCに加入すれば課税額が減るため、トータルで見ると加入した方がメリットは大きいと言えるでしょう。

⑤転職・離職する際は資産を持ち運べる

企業型DCは、転職・離職をする際に保有している年金資産を持ち運びできるのも特徴です。しかし、転職・離職先の企業によって、やや手続きが異なるため注意が必要です。

<転職・離職先の企業ごとの手続き方法>

  • 転職先の企業が企業型DCを導入している:移換手続き後、企業型DCに加入する
  • 転職先の企業が企業型DCを導入していない:iDeCoの加入手続き後、年金資産を移換する

どちらの場合でも、このように資産を持ち運ぶための移換手続きを行う必要があります。なお、転職・離職前の掛金額が移管後の上限を超えている場合は、金額の引き下げを求められるため注意しましょう。

企業型DCの3つのメリット

本項目では、企業型DCのメリットを3つピックアップしましたので、自身に合った制度かどうか確認してみてください。

①税金の観点からお得になる

企業型DCの加入について「選択制」を採用している企業で、加入せずに給料への上乗せとして受け取ってしまうと課税対象になります。しかし、企業型DCに加入し、毎月掛金として受け取れば非課税扱いとなりますので、税金の観点からお得になるのは大きなメリットのひとつです。

効率良く資産を増やしたい人は、運用益が全額非課税となる税制優遇措置適用の企業型DCへの加入がおすすめです。

②口座の手数料が企業負担である

掛金の管理や維持に必要な口座手数料は、企業型DCに加入していれば企業側が全額負担してくれるため、従業員が支払う必要がありません。一方iDeCoに加入する場合は、手数料は企業ではなく従業員が支払うことになりますので、注意が必要です。

口座の手数料は1回ずつの金額が少額であるため、気にならないかもしれませんが、長期になると大きな金額になるので、可能ならば企業型DCに加入しておいた方が良いでしょう。

③マッチング拠出を利用すればさらにお得になる

企業が拠出した掛金に加えて、従業員が上乗せで掛金を拠出できるマッチング拠出を利用すれば、さらにお得になる可能性があるのも企業型DCのメリットです。

マッチング拠出を使って追加で拠出した掛金には、全額所得控除が適用されるため、所得税と住民税が軽減されます。ただし、マッチング拠出を利用するには注意点がありますのでお伝えします。

マッチング拠出はその利用を認めている企業でなければ適用できない制度であるため、事前に担当部署に確認しなければなりません。また従業員が追加で拠出する金額は、企業が拠出する掛金の金額を超えてはならないことにも気をつけましょう。

マッチング拠出は節税効果を得られる有効な方法なので、注意点に気をつけてうまく活用しましょう。

企業型DCの2つのデメリット

福利厚生制度のひとつである企業型DCは、加入者にとってメリットが多い制度であることは間違いありません。しかしメリットだけでなく、デメリットも存在するため、加入する前に確認しておきましょう。

①原則60歳まで引き出せない

企業型DCは原則60歳まで受給できないため、急に資金が必要になった場合でも、簡単に引き出せません。そのため、「選択制」の企業では給与として受け取っておいた方が良いケースもあるでしょう。

②リスクがある

企業型DCで受けられる給付額は、従業員の運用実績によって変動するため、自身の運用次第で資産が減少してしまうリスクがあります。ただし、比較的安全と思われる現金の預貯金でも、資産価値が落ちるリスクはあります。どのような形でも一定のリスクは避けられないので、他の資産運用方法と比較して検討しましょう。

まとめ

本記事では、企業型DCの種類や特徴、iDeCoとの違い、メリット・デメリットについて解説しました。企業型DCは口座手数料の支払いを免れたり、税制優遇措置を受けられたりするなど多くのメリットがあるため、積極的に活用すべき福利厚生制度と言えます。

しかし原則60歳まで引き出せない点や、運用実績によって受給額が変動するリスクがある点は理解しておく必要があります。企業型DCは長期で利用する制度なので、信頼できるサポート先を見つけ、相談後に納得したうえで運用を進めていくのがおすすめです。

「株式会社EPコンサルティングサービス」の人事・労務アウトソーシングでは、高い専門性を持ったプロフェッショナルチームが高品質かつスピーディに企業型DCをサポートいたします。これまでの実績やノウハウを活かし、企業型DCにおける計算・確認等のオペレーションを行います。ぜひ株式会社EPコンサルティングサービスにご相談くださいませ。

コラム一覧へ戻る