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疑問解決!社会保険の扶養手続き 必要書類や家族・収入要件を網羅

給与・社保・人事労務

社会保険の扶養手続きは、家族を被扶養者として加入させる重要なプロセスです。正しい手続きを行うと、家族も健康保険の給付を受けられ、国民年金保険料の支払いが免除されるなどのメリットもあります。一方で、必要書類や要件確認など、手続きがわからず困る場合もあるでしょう。

本記事では、社会保険の扶養に関する基本知識から、手続きに必要な書類、申請方法、注意点まで詳しく解説します。これから扶養手続きを行う方は、ぜひ参考になさってください。

社会保険の扶養とは?

まずは社会保険の扶養について以下の3つの視点で解説します。

<社会保険の扶養>

  • 被扶養者の定義と範囲
  • 扶養に入るための収入要件
  • 社会保険の扶養に入るメリット・デメリット

順番に詳しく見ていきましょう。

被扶養者の定義と範囲

被扶養者とは、社会保険(健康保険)に加入している被保険者(扶養者)によって生計を維持されている家族を指します。被扶養者は、被保険者の収入で生活していると認められなければなりません。

被扶養者として認められる範囲は、原則として「三親等内の親族」です。具体的には、配偶者(事実婚を含む)、子ども、父母、祖父母、孫、兄弟姉妹、曾祖父母、叔父叔母などが該当します。

特に「配偶者、子ども、父母、孫、兄弟姉妹」は、同居していなくても被扶養者として認められる一方で、その他の親族は原則として被保険者と同一世帯で生活している必要があります。また、内縁関係の配偶者も被扶養者として認められます。

扶養に入るための収入要件

社会保険の被扶養者になるためには、収入に関する要件を満たさなければなりません。

まず、被扶養者となる方の年間収入が130万円未満(月額108,334円未満)であることが基本条件です。ただし、60歳以上の方や障害年金を受給している方については、年間収入180万円未満(月額150,000円未満)まで認められています。

収入が130万円未満であればよいわけではなく、「主として被保険者の収入によって生計を維持されている」ことが必要です。具体的には以下の条件も満たす必要があります。

  • 同居している場合:被扶養者の収入が被保険者の収入の2分の1未満であること
  • 別居している場合:被扶養者の収入が被保険者からの仕送りより少ないこと

収入は、給与収入だけでなく、年金収入、事業収入、不動産収入、利子・投資収入など継続的に得られる全ての収入が対象です。

社会保険の扶養に入るメリット・デメリット

社会保険の扶養に入ることには、いくつかのメリットとデメリットがあります。

【メリット】

  • 健康保険料の負担軽減
  • 扶養手当(家族手当)の支給

【デメリット】

  • 収入制限がある
  • 年金受給額への影響

扶養に入るかどうかは、家族全体の収入状況や将来設計を考慮した判断が求められます。

社会保険扶養手続きの必要書類

社会保険扶養手続きで必要となる書類は主に以下の3種類です。

<社会保険扶養手続きの必要書類>

  • 共通で必要な書類
  • 家族構成別の追加書類
  • 収入を証明する書類

各書類について詳しく解説します。

共通で必要な書類

  • 健康保険被扶養者(異動)届 :扶養に入る(または外れる)際の基本となる申請書です。正式名称は「健康保険被扶養者(異動)届/国民年金第3号被保険者関係届」となっている場合もあります。
  • 被扶養者現況表 :被扶養者の収入状況や被保険者との生計維持関係を証明するための書類です。
  • 世帯全員の住民票 :被保険者と被扶養者の同居・別居の状況や続柄を確認するためのものです。 ただし、マイナンバー(個人番号)が記載された住民票の場合、提出を省略可能な場合があります。

家族構成別の追加書類

被扶養者として認定を受ける家族の種類や状況によって、共通書類に加えて提出が必要となる追加書類が異なります。

【配偶者の場合】

  • 婚姻関係を証明する書類:戸籍謄本または婚姻届受理証明書が必要
  • 収入を証明する書類:収入がない場合は非課税証明書、収入がある場合は給与明細(直近3ヶ月分)や確定申告書の写しなどが必要
  • 退職した場合:退職証明書や離職票、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書などが必要

【内縁関係の配偶者の場合】

  • 世帯全員の住民票(続柄が記載されたもの)
  • 被保険者及び認定対象者それぞれの戸籍謄本または戸籍抄本(1ヶ月以内に発行されたもの)

【子どもの場合】

  • 16歳未満(中学生まで):特に追加書類は不要
  • 16歳以上で学生の場合:学生証の写しが必要
  • 16歳以上で無職の場合:非課税証明書が必要
  • 16歳以上で収入がある場合:直近の給与明細(3ヶ月分)の写しまたは給与支払(見込)証明書が必要

これらの書類に加えて、被扶養者が被保険者と姓が異なる場合や別居している場合には、追加の証明書類が必要になることがあります。

収入を証明する書類

被扶養者の収入状況を証明するための書類は、収入の種類や状況によって異なります。主な書類は以下のとおりです。

  • 所得証明書/課税(非課税)証明書
  • 給与明細の写し
  • 確定申告書の写し
  • 年金振込通知書の写し
  • 退職証明書等
  • 16歳以上で収入がある場合:直近の給与明細(3ヶ月分)の写しまたは給与支払(見込)証明書が必要
  • その他、収入に関する証明書類

複数の収入源がある場合は、それぞれの収入を証明する書類が必要となるため注意が必要です。

社会保険扶養手続きの流れと申請方法

ここからは社会保険扶養手続きの流れと申請方法についてまとめます。

扶養の要件確認と必要書類の準備

社会保険の扶養手続きをスムーズに進めるためには、まず被扶養者が要件を満たしているかどうかを確認し、必要な書類を事前に準備することが重要です。要件確認では、続柄や収入、同一生計、年齢といった実態を確認します。

次に、必要な書類を洗い出し基本申請書類や収入証明書類などを準備します。発行日やコピーが認められるかといった点にも注意しましょう。

申請書類の作成

必要書類がそろったら、被扶養者認定のための申請書類を作成します。申請書類の中心となるのは「健康保険被扶養者(異動)届」です。申請書類作成時には、正確な情報記入を心がけて記入漏れの内容を丁寧に確認します。添付書類と矛盾がないように整合性のとれた記述が求められます。

申請と手続き

申請書類の作成が完了したら、次は実際に申請を行い、手続きを進めます。扶養手続きの申請をする場合には、電子申請、郵送、窓口持参の中から適した方法を選びましょう。提出先は、加入している健康保険の種類によって異なるため注意が必要です。多くの場合、被保険者(扶養する側)は申請書類を勤務先の人事・総務部門に提出し、会社を通じて手続きが行われます。

扶養手続きの注意点

扶養手続きを行う際に注意すべき点がいくつかあります。ここでは、2つの事例を取り上げ、注意点を解説します。

別居している家族を扶養に入れる場合

被保険者と別居している家族を扶養に入れる場合、同居している場合と比べて追加の要件や書類が必要になります。別居している家族を被扶養者として認定してもらうためには、同居の場合の基本要件に加えて、被保険者からの経済的援助(仕送り)が実際に行われていることを証明しなければなりません。送金証明書類や送金計画書、別居理由書といった書類の提出が求められます。

収入が変動した場合

被扶養者の収入が変動した場合、特に収入が増加して基準額を超えるようになった場合は、被扶養者資格に影響が生じます。収入増加時には、速やかに「健康保険被扶養者(異動)届」を提出して被扶養者から外す手続き(減少届)を行いましょう。

被扶養者でなかった方の収入が減少し、被扶養者の要件を満たすようになった場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出して被扶養者に加える手続き(増加届)を行います。収入変動があった場合は、早めに勤務先の人事・総務担当者または加入している健康保険組合に相談してください。

まとめ

社会保険の扶養手続きについて、必要書類から手続きの流れ、注意点まで詳しく解説してきました。扶養手続きには、健康保険被扶養者(異動)届や扶養状況届といった基本書類のほか、家族構成や収入状況に応じた証明書類が必要です。配偶者、子ども、親などの家族構成によって必要な書類は異なりますので、事前に確認しておくことが重要です。

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