コラム

働き方の未来は ―労働基準法大改正の現在地―

給与・社保・人事労務

2025(R7)年1月8日の労働基準関係法制研究会報告書(以下「報告書」ともいう。)が公表されてから、早くも1年以上が経過しました。報告書は、「労働基準法の施行から約80年労働基準法の将来像について抜本的な検討を行う時期」であるということ、そして、「働き方改革関連法施行後5年が経過」し、働き方改革関連法の効果を図りつつ、働き方の更なる改革として何が必要かを検討するにあたり、労働基準関係法制に共通する総論的課題を踏まえ、労働時間制度の具体的課題について検討することを示しています。

しかし現状は、報告書をベースにした労働基準法の大改正から一転、労働時間法制の見直しへ変化しています。

そこで今回は、報告書に記載されていた当初の想定、これまでの経緯、そして、法改正の議論の現在地について、見てみたいと思います。

労働基準関係法制研究会報告書が想定していた法改正のターゲット

それでは早速、当初、報告書ではどのようなものを法改正のターゲットにしていたのか見ていきたいと思います。

報告書の内容は、大きく次の通りになっています。

Ⅰ はじめに

Ⅱ 労働基準関係法制に共通する総論的課題

1 労働基準法における「労働者」について

2 労働基準法における「事業」について

3 労使コミュニケーションの在り方について

Ⅲ 労働時間法制の具体的課題

1 最長労働時間規制

2 労働からの解放に関する規制

3 割増賃金規制

Ⅳ おわりに

この「Ⅱ」と「Ⅲ」が法改正のターゲットとなり、特に「Ⅱ」については、労働基準法の保護対象である「労働者」や法の適用範囲である「事業」という、法の適用の根本にかかわる部分が挙げられていると共に、「Ⅱ 3 労使コミュニケーションの在り方について」においては、過半数代表者の適正な選出方法等をはじめとし、労使の合意等の一定の手続きの下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とする仕組みが検討される方向性をなっていました。

つまり、法の適用、一定の条件の下に個別企業、事業場、労働者の実情に合わせた労働条件の拡張というように今までの考え方が一新されるような大改正が検討されていたと言っても良いのではないでしょうか。

また、「Ⅲ」については、労働時間「規制」に関するものとなり、この「規制」が一定の議論を経て「緩和」に変化し、現在の法改正の議論になっているところです。

時系列でみるこれまでの流れ

次に、現状の議論に至るまでの流れを時系列的に見ていきたいと思います。法改正は報告書をベースに検討が行われていましたが、実は、それ以前より検討が行われていましたので、その部分から見てみると、以下のようになります。

・2023(R5)年10月20日:「新しい時代の働き方に関する研究会報告書」公表

・2025(R7)年1月8日 :「労働基準関係法制研究会報告書」公表

・2025(R7)年1月21日 :労働政策審議会での議論スタート

・2025(R7)年10月21日:新内閣発足、各閣僚への指示書提示

→ 「兼業・副業の促進」、「労働時間規制の緩和」、「働き方改革の推進」、「多様な働き方を踏まえたルール整備」

・2025(R7)年12月26日:2026年国会への法案提出見送り

・2026(R8)年4月22日 :第4回日本成長戦略会議

→ 「裁量労働制」や「変形労働時間制」など労働時間制度の見直し検討の加速

・2026(R8)年5月27日 :日本成長戦略会議労働市場改革分科会とりまとめ(案)公表

上記から、報告書で当初想定されていた法改正のターゲットが、現状では、労働時間に関連するもののみなっていることが分かります。

そこで以下では、現在、議論の中心となっている「労働時間法制」について、見ていきたいと思います。

80年から40年へ、労働基準法大改正から労働時間法制の見直しへ

当初報告書では、「労働基準法の施行から約80年労働基準法の将来像について抜本的な検討を行う時期」と示していたものの、現在、様々なホームページ等で「40年ぶりの大改正」というような見出しを目にします。

これは、1987(昭和62)年の労働基準法改正から「40年」ということであり、この時の法改正は、法定労働時間の短縮(週40時間労働の移行)、変形労働時間制の導入、事業場外労働や裁量労働制の導入、そして、年次有給休暇の付与日数の増加、比例付与の導入、という今では当たり前の制度がスタートしたタイミングとなります(もしかすると、40年かけて当たり前になった、各企業に概ね根付いたと言う表現が良いかもしれません。)。

また、報告書では、働き方改革関連法施行から5年を経過したことによる見直しという視点において、「最長労働時間規制」そして「労働からの解放に関する規制」を挙げていますが、現状は、「労働時間規制の『緩和』」という視点で議論がなされているところとなっております。

これらから、今回の労働基準法の改正は、労働時間法制の見直しになるということは想像に難くないと思いますが、その中でも特に、「規制」と「緩和」がどのように着地していくのかということが注目すべきポイントかと思います。

今後、注目すべき労働時間法制の見直し

では、労働時間法制の見直しでどのようなものが検討されているのか、ご紹介させて頂きます。

報告書に基づく労働政策審議会、そして、日本成長戦略会で議論されていたものとしては、以下のようなものが挙げられます。

①変形労働時間制の労働時間特定後の変更

②裁量労働制(専門業務型及び企画業務型)の適用職種の拡大

③フレックスタイム制の柔軟な適用

④連続勤務規制(13日を超える連続勤務の禁止)

⑤勤務間インターバル制度

⑥労働基準監督署の指導緩和

上記①及び②に関しては、そもそも「導入していない」という企業もあると思いますので、改正後のインパクトはそれ程大きくないかもしれませんが、改正されたことにより導入を検討する企業は増えるのではないかと思われます。

今年の夏にかけて、より詳細な議論が行われていくかと思いますので、どのような議論が行われていくのか、しっかりと見ていきたいと思います。

おわりに

現状の法改正の議論を見ますと「労働基準法の施行から約80年労働基準法の将来像について抜本的な検討」は、「労働時間法制の40年ぶりの見直し」となり、進んでいくことになるかと思います。労働時間管理は、様々な労務管理の中において、最も重要なものの1つと言っても過言ではないでしょう。そのため、法改正の動きは見つつも、現状として、しっかりと労働時間管理が出来ているか確認することが必要です。

労働時間管理はどう行うべきものなのか、現時点で法律に違反している箇所はないか等、不明な点や気になることがありましたら、是非、弊社へお問い合わせ頂ければと思います。

松本 好人

松本 好人Yoshito Matsumoto

HRソリューション事業部 取締役事業部長 特定社会保険労務士 社会保険労務士法人EOS 代表社員 法学修士、日本労働法学会所属 大学院修了後、栃木労働局での相談業務、横浜の社労士事務所を経て、EPCSに入社。

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