コラム

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大

給与・社保・人事労務

今年の梅雨は例年より短く、梅雨の雰囲気をあまり感じられないまま梅雨明けしてしまったように思います。7月のうちから熱中症警戒アラートが続出しており、医療機関へ熱中症疑いでの受診も増えているようです。

国民皆保険である日本では、国民は医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度、国民健康保険)に必ず加入していることになるので、医療機関での受診をする場合、健康保険証またはマイナンバーカードを提示していると思います。

今回は、被用者保険における2024年10月法改正である、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大について触れたいと思います。

適用拡大って何?

現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で週20時間以上働く短時間労働者は、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となっています。

この短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、令和6年10月から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。

厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数(※)が51人以上となることが見込まれる企業等のことです。

なお、この企業等のことを「特定適用事業所」といいます。

※法人事業所の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者の総数、個人事業所の場合は適用事業所単位の被保険者数となります。

短時間労働者って、どんな人?

では、そもそも短時間労働者とは、どういった働き方の人を指すのでしょうか。

特定適用事業所に勤務する以下の条件にすべて該当する方が短時間労働者として加入対象となります(1つでも要件に該当しないものがあれば、加入対象にはなりません。)。

・週の所定労働時間が20時間以上

・所定内賃金が月額88,000円以上

・2ヶ月を超える雇用の見込みがある

・学生ではない

特定適用事業所に該当したら、何が起きる…?

①令和6年(2024年)10月1日から該当する場合

令和5年10月から令和6年8月までの各月のうち、使用される厚生年金保 険の被保険者の総数が6か月以上50人を超えたことが確認できる場合は、年金機構において対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして扱い、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」が年金機構から送付されます。

そのため、特定適用事業所該当届の届出は不要です。

被保険者資格取得届については、適用拡大の実施に伴い、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合、各適用事業所がその者に係る被保険者資格取得届を届け出る必要があります(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得届については、健康保険組合へ届け出ることになります。)。

※新たに適用拡大の対象となることが見込まれる事業所には、令和6年9月上旬までに「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付される予定です。

②令和6年(2024年)10月2日以降に該当する場合

施行日以降は、年金機構において、使用される厚生年金保険の被保険者の総数 が直近11か月のうち、5か月50人を超えたことが確認できた場合(5か月目の翌月も被保険者数が50人を超えると特定適用事業所に該当する場合)は、 対象の適用事業所に対して、「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付されます。

特定適用事業所の要件を満たす場合、事業主は、特定適用事業所に該当した年月日等を「特定適用事業所該当届」にて届出をする必要があります。

なお、特定適用事業所の要件を満たす事業所から該当届が提出されていない場合は、特定適用事業所に該当したものとして取り扱い、日本年金機構から「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。

特定適用事業所に該当したら、何をすればいいの?

事業所が特定適用事業所に該当することが分かった際、事業主はまず何をすれば良いのでしょうか。

① 加入者の把握…加入させるべき従業員の有無の確認、対象者のピックアップ

② 社内周知…社内の加入対象者への周知

③ 従業員とのコミュニケーション…必要に応じて説明会や個人面談を実施

④ 書類の作成および届出…被保険者資格取得届を届出

EPコンサルティングサービス/社会保険労務士法人EOSでは、経験豊富なスタッフが企業の実情に応じたアドバイスを実施しております。細かいご質問でも、承る事ができますので、是非一度、お声がけ頂ければと思います。

角下 梨絵Rie Sumishita

HRソリューション事業部 マネージャー 社会保険労務士 社会保険労務士試験合格後、EPコンサルティングサービスに入社。現在、事業部のマネジ メントの他、外資系企業の給与計算、社会保険及び労務管理を中心に担当

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