コラム
なぜ日本では“担当者が変わらないこと”が重視されるのか
日本のビジネスにおける「人」の重み
日本でビジネスを進める中で、多くの海外企業が最初に感じる違いの一つに、「担当者の存在感の大きさ」があります。契約内容やサービス範囲が明確に定義されていたとしても、実務の現場では「誰が担当しているか」が重要な意味を持つ場面が少なくありません。
これは、日本のビジネスが長期的な関係性を重視する文化に根ざしているためです。単発の取引ではなく、継続的なやり取りの中で信頼関係を築き、その信頼の延長線上で業務が円滑に進むという考え方が広く共有されています。そのため、担当者が変わることは単なる人事異動ではなく、築いてきた関係性が一度リセットされる出来事として受け止められることがあります。
担当者変更がもたらす“見えないコスト”
担当者が変わることの影響は、引き継ぎ資料や業務マニュアルだけでは吸収しきれない部分に現れます。これまでのやり取りの中で蓄積されてきた細かな背景や判断のニュアンス、暗黙の前提といった要素は、形式的な引き継ぎでは伝わりにくいものです。
例えば、同じ処理であっても「どこまで確認すべきか」「どの程度までクライアントに共有するか」といった判断には、担当者ごとの理解や経験が影響します。こうした違いが積み重なると、業務のスピードや品質に微妙な差が生じることがあります。さらに、クライアント側にとっては、新しい担当者に対して改めて説明を行う負担が発生し、コミュニケーションコストも増加します。
こうした“見えないコスト”は、数値としては表れにくいものの、長期的には大きな影響を及ぼします。そのため、日本では担当者の継続性が重視される傾向があります。
海外企業が直面しやすいギャップ
海外企業にとっては、こうした「人に紐づく関係性」は必ずしも当たり前ではありません。多くの国では、役割やプロセスが標準化されており、誰が担当しても一定の品質が担保されることが前提とされています。そのため、担当者が変わること自体はそれほど大きな問題と認識されないケースも少なくありません。
しかし、日本においては、担当者の理解度やコミュニケーションの積み重ねが業務の質に直結する場面が多く見られます。この違いを十分に認識しないまま運用を進めると、「なぜ同じ依頼なのに対応が変わるのか」「なぜ以前より時間がかかるのか」といった違和感につながることがあります。
こうしたギャップを埋めるためには、単に業務を委託するだけでなく、継続的な関係性を前提としたパートナーシップを構築することが重要です。
継続性を担保するパートナーの価値
日本で安定したバックオフィス運営を実現するためには、「担当者が変わらないこと」を理想としつつも、現実的には変化が起こり得ることを前提に、その影響を最小限に抑える仕組みが求められます。
その点において、BPOは単に業務を外部化する手段にとどまらず、クライアント側が本来負うべき担当者変更のリスクを引き受ける役割も担います。担当者の異動や退職が発生した場合でも、サービス提供側がその影響を吸収し、クライアントへの影響を最小化することが期待されます。
EPCSでは、こうした考え方に基づき、原則として複数名のチームで業務を担当する体制を採用しています。最低でも3名で構成されるチームにより、業務知識やクライアント理解を共有し、特定の担当者に依存しない運用を実現しています。そのため、万一チーム内の一部メンバーに変更があった場合でも、サービスの質や対応の一貫性を維持しながら、シームレスな引き継ぎが可能となります。
担当者の継続性が重視される日本においては、「人が変わらないこと」だけでなく、「変わっても変わらないサービスを提供できること」が重要です。こうした体制こそが、長期的な信頼関係を支える基盤となります。

山口 浩一Koichi Yamaguchi
ACCTソリューション事業部 マネージャー 営業担当 BBSでの経理実務・コンサルティング経験を経て、2010年EPコンサルティングサービスに入社。2017年より営業を担当。
