コラム

残業管理とは?管理が必要な理由や阻まれる要因について解説!残業管理の方法も紹介

給与・社保・人事労務

企業経営において重要な残業管理は、法令遵守や従業員の健康維持だけでなく、生産性向上やコスト削減にも影響をおよぼします。一方で、さまざまな要因によって効果的な残業管理が阻まれている場合もあるでしょう。

本記事では、残業管理の意義や必要性、阻害要因、効果的な管理方法、そして管理を効率化するためのツールやシステムについて詳しく解説します。残業問題に悩む企業担当者の方々は最後までご覧ください。

残業管理とは

残業管理とは、従業員の所定労働時間を超える労働(残業)について、実態を把握し適切にコントロールするための一連の取り組みです。残業時間の記録・集計・分析、残業申請・承認のフロー整備、残業削減のための施策立案・実行などが含まれます。

効果的な残業管理を実現するためには、単に残業時間を記録するだけでは不十分です。なぜ残業が発生するのかという原因分析と、それに基づく業務改善までを視野に入れた総合的なアプローチが求められます。

残業管理が必要な理由

残業管理が必要な理由は、主に以下の3つです。

<残業管理が必要な理由>

  • 法令遵守と企業リスクの回避のため
  • 従業員の健康とモチベーション維持のため
  • 生産性向上とコスト削減のため

順番に詳しく見ていきましょう。

法令遵守と企業リスクの回避のため

法令遵守と企業リスクの回避は、残業管理が必要な理由のひとつです。労働基準法では、法定労働時間(原則として1日8時間、週40時間)を超える労働に対しては、労使協定(いわゆる36協定)の締結と届出、そして25%以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。また、月45時間、年360時間を原則とする残業時間の上限規制も適用されています。

法的要件を満たさない場合、企業は労働基準監督署からの是正勧告や罰則の対象となりかねません。悪質なケースでは、企業名の公表や刑事罰が科されることもあります。未払い残業代の請求訴訟につながるケースも少なくありません。

残業管理は単なる管理業務ではなく、企業の存続にも関わる重要なリスクマネジメントの一環と捉えるべきです。

従業員の健康とモチベーション維持のため

適切な残業管理は、従業員の健康維持とモチベーション向上につながります。長時間におよぶ残業が継続すると、従業員の身体的・精神的健康に深刻な影響をおよぼすからです。

厚生労働省によると、月80時間を超える残業は脳・心臓疾患発症リスクが高まる「過労死ライン」とされており、企業は従業員がこのラインを超えないよう管理しなければなりません。健康を損なった従業員は、長期的な休職や退職につながるケースも少なくないのです。

従業員が無理なく働ける環境を整えれば、健康維持だけでなく、従業員満足度や企業への帰属意識の向上にもつながります。残業管理は単なる時間管理ではなく、企業の最も重要な資産である「人」を守り、その能力を最大限に引き出すための重要な取り組みなのです。

生産性向上とコスト削減のため

残業管理は生産性向上とコスト削減をもたらすため、経営効率の観点からも重要です。長時間労働による疲労の蓄積は、判断力や創造性の低下、ミスの増加などを引き起こします。残業時間が長くなればなるほど、投入した時間に対する成果は減少していくのです。

残業代は通常の賃金に25%以上の割増率が適用されるため、同じ業務量であれば定時内に処理する方がコスト効率は高くなります。月間の残業時間が社員一人当たり20時間削減できれば、かなりのコスト削減につながります。

残業管理は単なる労務管理ではなく、企業の競争力強化とコスト最適化のための戦略と位置づけて取り組みましょう。

残業管理を阻む要因とは?

一方で、残業管理を阻む要因には注意が必要です。主な要因は以下の3つです。

<残業管理を阻む要因>

  • 属人化された業務と業務量の偏り
  • 管理職の意識不足と曖昧なルール
  • 従業員の残業体質と遠慮

各要因について詳しく解説します。

属人化された業務と業務量の偏り

残業管理が難しい要因の一つは、業務の属人化や業務量の偏りです。特定の従業員だけが担当できる仕事が多いと、その人に業務が集中し残業が常態化しやすくなります。部署や個人ごとの業務配分が不均衡でも、一部の従業員に過度な負担がかかります。

こうした状況では、管理者が残業削減を指示しても実際には改善が進みません。サービス残業や持ち帰り仕事など不適切な対応を招くこともあります。

管理職の意識不足と曖昧なルール

管理職の残業に対する意識不足や、残業ルールの曖昧さも大きな障壁です。管理職が長時間労働を当然と考えていたり、部下の労働時間管理に無関心だったりすると、現場での改善が進みません。

残業の申請や承認、上限時間などのルールが不明確な場合でも、不要な残業が発生しやすくなります。ルールがあっても形骸化している場合は実効性がありません。残業管理の徹底には管理職の意識改革と明確なルール作りが不可欠です。現場への周知や定期的な見直しも重要です。

従業員の残業体質と遠慮

従業員自身の残業体質や職場の同調圧力も、残業管理の妨げとなります。残業を美徳と考えたり、残業代を収入源として期待したりする従業員がいる場合、残業削減への抵抗感が生まれます。

周囲に遠慮して先に帰りにくい、上司や同僚が残っていると帰宅しづらいといった心理的なハードルも根強いです。このような文化や意識を変えるためには、職場全体での価値観の転換や、定時退社を促す取り組み、評価制度の見直しが必要となります。

効果的な残業管理の方法

効果的な残業管理を行うにはどうしたらいいのでしょうか。具体的な方法を3つ紹介します。

<効果的な残業管理の方法>

  • 現状の残業実態を把握する
  • 業務量や評価制度を見直す
  • 残業申請のルールを見直し周知する

順番に詳しく見ていきましょう。

現状の残業実態を把握する

効果的な残業管理の第一歩は、残業実態の正確な把握です。タイムカードや勤怠管理システムを活用して出退勤時間を記録し、部署別・個人別など多角的なデータ分析を行います。

残業の内容や理由を従業員自身に記録してもらい、不要な残業や改善すべき業務を特定しましょう。現場の声もヒアリングしながら、数字だけでは見えない課題を把握し、的確な対策につなげます。実態把握が残業削減の出発点なのです。

業務量や評価制度を見直す

残業削減には、業務量の適正化と評価制度の見直しが不可欠です。業務の必要性を根本から見直し、不要な業務や優先度の低い作業を削減しましょう。人員配置の見直しや業務の平準化も重要です。

「長時間労働を評価する」制度から「成果や生産性を評価する」制度へ転換し、短時間で高い成果を上げる従業員を正当に評価する仕組みを導入します。残業に頼らない働き方が促進され、組織全体の生産性向上につながるのです。

残業申請のルールを見直し周知する

明確な残業申請・承認ルールの策定と周知徹底は、残業管理の基本です。残業は原則として事前申請・承認とし、必要性や予定時間を上司が確認します。部署ごとに残業基準を設け、突発的な残業にも対応できる例外規定も設けましょう。

ルールは全従業員に説明し、理解を深めなければなりません。運用状況を定期的に確認し、必要に応じてルールの見直しを行い形骸化を防ぎます。現場で実効性のある運用を目指してください。

残業管理を効率化するツールやシステム

残業管理を効率化するには、勤怠管理システムやクラウド型ツールの活用が効果的です。ICカードやスマートフォンによる打刻、PCログ管理システムなどを導入して、正確な労働時間の記録を実現しましょう。

残業申請・承認のワークフローをシステム化すれば、申請漏れや承認遅延を防げます。データ分析機能を活用すれば、部署や個人ごとの残業傾向を可視化可能です。システム導入時は運用ルールの周知と研修も重要です。

まとめ

残業管理は、法令遵守や従業員の健康維持、生産性向上、コスト削減など多面的な経営課題の解決に直結します。包括的なアプローチで、企業と従業員双方にとってより良い働き方を実現してください。

自社での残業管理に課題がある場合は、株式会社EPコンサルティングサービスが提供するプロフェッショナルアウトソーシングサービスをご活用ください。人事労務、会計および経理などの管理業務を支援し、お客様のコア業務への経営資源集中に貢献いたします。

コラム一覧へ戻る