コラム
伝えることの難しさ:会計業務におけるコミュニケーションの壁
たまに部下から「Aさんには言ったのですが出来てませんでした・・・」「出来てはいたのですが、かなり回り道をしていました…」「B社に資料依頼したのですが、期待していたものと違います・・・」というような話を聞くことがあります。私自身も同様の経験をしたことがあり、その当時の上司から「伝わっていない(出来ていない)のであれば、言っていないのと同じだ」とよく叱責されていました。
ビジネスの場では、情報を正しく「伝える」ことがとても重要なスキルとして求められています。特に会計業務においては、数字や専門用語が多く、上司、部下、そしてクライアントに対して正確かつ分かりやすく情報を伝えることが必要不可欠です。しかし、現実には「伝わらない」という問題が度々起こります。今回は、会計業務におけるコミュニケーションの難しさについて考えたいと思います。
会計業務におけるコミュニケーションの課題
相手の立場を理解しない伝え方
上司には全体像と戦略的な視点を求められる一方で、部下には具体的な指示や手順が必要です。また、クライアントには信頼感と分かりやすさが重要です。相手の立場を考慮せずに情報を伝えると、「何を言いたいのかわからない」と思われてしまいます。
数字の解釈の違い
数字は正しく伝わりそうな情報ですが、その解釈は人によって異なります。例えば、ある不明な差異を調査するプロジェクトで「不明な差異が30万円」という報告をした場合、上司は「もっと調査するべきだ」と感じるかもしれませんが、部下は「十分な成果だ」と考えるかもしれません。このような解釈のズレが誤解を生む原因になります。
専門用語の壁
会計業務では、「減価償却」「回収可能性」「キャッシュフロー」「割引現在価値」といった専門用語が日常的に使われます。これらの言葉は会計担当者には当たり前でも、クライアントや他部署の人々には理解しづらい場合があります。「専門用語をできるだけ使わずに説明する」という努力が必要ですが、それを怠ると「伝わらない」という壁に直面します。
伝わらない問題を克服するためのヒント
相手目線で考える
上司には戦略的な視点で数字の背景や未来予測を示し、部下には具体的な行動指針を明確に伝えるよう心掛けます。また、クライアントには専門知識を押し付けるのではなく、「どうすれば相手にメリットがあるか」を中心に話すことが重要です。
シンプルに伝える
複雑な内容ほど、シンプルな言葉で説明することが求められます。専門用語を使う場合は、その意味を簡単に補足することで相手の理解を助けましょう。例えば、「割引現在価値とは将来得られる見込みの金銭を現在受け取るとしたら、どの程度の価値になるかを示した数値のことです」といった具合です。
ストーリー性を持たせる
数字やデータだけではなく、それらがどんな背景や影響を持つのかストーリーとして説明すると、相手はより理解しやすくなります。「前年度では不明な差異が5,000万円ありましたが、このプロジェクトで調査の結果、当年度の不明な差異は30万円まで減少しました。」といった形で具体性と流れを意識しましょう。
フィードバックを求める
「伝わったかどうか」を確認するためにフィードバックを求める習慣をつけましょう。「この説明で不明な点はありませんでしたか?」と尋ねることや、途中経過の確認・報告をする(求める)ことで、相手との認識ギャップを埋めることができます。
最後に
会計業務は数字やデータという客観的な情報が中心ですが、それ以上に重要なのは「それらをどう導きどう伝えるか」です。上司、部下、クライアントという異なる立場の人々とのコミュニケーションでは、それぞれ異なるアプローチが必要です。「伝わらない」を克服するためには、自分本位ではなく相手目線で考えること。そして、その努力こそが信頼関係構築につながります。
コミュニケーションは一朝一夕では改善しません。しかし、小さな工夫と積み重ねによって、大きな成果につながると考えています。日々意識して取り組んでいきたいものです。
金子 雅英Masahide Kaneko
ACCTソリューション事業部 マネージャー 2007年入社。事業会社の連結決算や開示業務を経験。日系事業会社のBPOを中心に担当。