コラム
「あの支払い、済んでいましたっけ?」が起きる会社の債務管理、何が問題なのか
「この請求書、もう支払いましたっけ?」
月末や支払日前になると、社内でそんなやり取りが交わされることはありませんか。
請求書を紙で保管していたり、Excelで管理していたりすると、どうしても担当者同士の確認や口頭での引き継ぎに頼らざるを得ない場面が出てきます。
中小企業では限られた人数で経理業務を回しているため、そのような運用になっているのも自然なことです。
ただ、日々の業務が一見問題なく回っているように見えても、その裏には見えにくいリスクや非効率が潜んでいることがあります。
債務管理で起こりやすいリスクとは
請求書や支払予定をExcelや紙で管理している場合、次のような問題が発生しやすくなります。
1. 支払漏れが発生する
請求書が担当者の机の上に置かれたままになっていたり、メールで受領した請求書を見落としてしまったりすると、支払予定表に反映されないまま期日を迎えてしまうことがあります。
支払遅延は取引先との信頼関係に影響するだけでなく、場合によっては遅延損害金が発生することもあります。
2. 二重払いが発生する
複数の担当者が請求書を扱う場合、「誰かが処理しただろう」と思い込んでしまうことがあります。
その結果、実際には未処理だったり、逆に別々の担当者が同じ請求書を支払ってしまったりするケースも考えられます。
特に、メール添付の請求書と紙の請求書が混在している場合は注意が必要です。
3. 支払予定が見えにくい
経営者や管理者から「来月はいくら支払いがありますか」と聞かれた際、複数のExcelファイルや請求書を確認しなければ回答できない、ということはないでしょうか。
支払予定が一覧で把握できていないと、資金繰り(お金の出入りの見通し)の精度にも影響が出てきます。
4. 担当者依存になりやすい
長年担当している社員の経験や記憶に頼った運用では、その担当者が不在の際に業務が滞る可能性があります。
「この取引先は毎月こう処理する」といった暗黙のルールは、意外と社内で共有されていないものです。
5. 転記ミスが発生する
紙の請求書を見ながらExcelに入力し、さらにインターネットバンキングへ手入力する。
こうした“書き写す作業”が増えるほど、金額や振込先の入力ミスが起こりやすくなります。
特に見落とされやすい「未計上」のリスク
これらの中でも、特に注意したいのが「請求書が経理に届いていないため、支払いも計上もされていない」というケースです。
支払漏れは比較的気づきやすく、取引先からの連絡などで発覚することが多いものです。
一方で、請求書そのものが社内で止まっていたり、担当部署から経理へ提出されていなかったりすると、経理部門はその債務(将来支払う義務)の存在に気づくことができません。
その結果、本来計上すべき費用や未払金(まだ支払っていない費用)が決算に反映されない可能性があります。
たとえば、3月決算の会社で、3月中にサービス提供を受けていたにもかかわらず、請求書が4月末まで経理に届かなかったとします。
この場合、3月の費用が計上されず、決算上の利益が実態より多く計上されてしまうことがあります。
もちろん単発であれば大きな問題とならない場合もありますが、こうした漏れが積み重なると、決算の正確性に影響を及ぼします。
また、税務調査の際には「なぜこの費用が計上されていないのか」といった説明が求められることもあります。
請求書の管理は単なる支払業務ではなく、適正な会計処理の前提となる重要なプロセスともいえるでしょう。
まずは現状を見直すことから
債務管理の方法に絶対的な正解があるわけではなく、会社の規模や業務内容によって最適な方法は異なります。
これまでの運用は、限られた人員や時間の中で工夫して築かれてきたものであり、決して否定されるべきものではありません。
ただ、「支払漏れが起きたことがある」「担当者しか状況が分からない」「支払予定をすぐに把握できない」といった場面がある場合は、一度運用を整理してみる価値があるかもしれません。
まずは、請求書の受領から支払いまでの流れを見える化し、どこで情報が滞りやすいのかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
弊社では、経理業務の効率化や内部管理体制の見直しについてもご相談を承っています。
気になる点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

佐田 好隆Yoshitaka Sada
ACCTソリューション事業部 マネージャー 税理士 大学院修了後、2008年EPコンサルティングサービスに入社。外資系事業会社やSPCを中心に担当
