コラム

合成の誤謬

会計・経理・税務

消費税に軽減税率の制度が適用されるようになったのは2019年の10月である。早いもので、もう5年以上が経過した。制度としてすっかり定着したと言えるだろう。差分が2%とは言え、食料品の税率が低くなっているのは一消費者としてはありがたい。

さて、企業における経費精算の伝票においてよく見かけるパターンとして、社用で(軽減税率の対象となる)食料品を購入し、その際にレジ袋も一緒に購入する、というものがある。

この場合、食料品は軽減税率8%、レジ袋は標準税率の10%である。大概のシステムでは軽減税率と標準税率は別個に入力する必要があるから、例えばコンビニでの1枚のレシートをもとに8%部分と10%部分の2本、システム入力を行う=仕訳を切る=必要がある。経理処理に不慣れな方であれば、レジ袋(だけ)が10%であることを知らずに一括で軽減税率として経費精算を行ってしまい、経理担当者から直すように促され、再度入力し直すこともあるかもしれない。

上記の運用はたぶん、日本中で行われているのではないかと私は推測する。そして思うのだ。数円のレジ袋だけ税率10%のために、伝票入力の手間が倍近くになっているのではないかと。日本中の会社で通年、発生しているので、集計したら案外多大な工数で、それを金額換算したら凄いことになったりしないだろうか。

私は地球環境を守りたいと願っているから、自分もマイバッグを持ち歩いているし、レジ袋を有料化したのは良いことだと思っている。他方、日本中で伝票入力の手間が増えたことは間違いない。ではどうすればいいのか?解決案が思い浮かばない。ただ、「合成の誤謬」という表現がこれに近いのかなあ、と感じてはいる。

幅舘 稔

幅舘 稔Minoru Habatate

ACCTソリューション事業部 マネージャー 公認会計士 事業会社在職中の2008年に公認会計士試験合格。 2011年公認会計士登録。同年EPコンサルティングサービスに入社。

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