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健康診断、実施していますか?

Payroll accounting, social insurance, personnel and labor affairs

今年も残すところ約2ヶ月となってまいりました。 10月は、給与計算および社会保険で言えば算定基礎届の結果が給与計算に反映されたり、年末調整の準備に入る時期となります。 人事に携わる方の業務が繁忙期に向かう時期ではありますが、忙しい中でも定期的な健康診断の受診はとても大切です。 ご自身だけではなく、自社の従業員の健康診断の管理も、とても重要な業務ですので、今回は健康診断について触れてみたいと思います。

健康診断の実施について

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。 この労働者とは、正社員のみではなく、正社員の週所定労働時間の3/4以上働くパートタイム労働者も含まれることになります。

事業者に実施が義務づけられている健康診断には、以下のものがありますが、今回は、雇入れ時および定期健康診断を中心にご案内させて頂きます。

・雇入時の健康診断(安衛則第43条)

・定期健康診断 (安衛則第44条)

・特定業務従事者の健康診断 (安衛則第45条)

・海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2)

・給食従業員の検便 (安衛則第47条)

一般健康診断の項目

雇入れ時健康診断及び定期健康診断の項目は、以下のとおりです。

1. 既往歴及び業務歴の調査

2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 ※

4. 胸部エックス線検査 ※

5. 血圧の測定

6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数) ※

7. 肝機能検査(GOT、GTP、γ―GTP)※

8. 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)※

9. 血糖検査 ※

10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

11. 心電図検査 ※

定期健康診断(安衛則第44条)における健康診断の項目の省略基準

定期健康診断については、上記※の健康診断項目については、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することができます。なお、「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいいます。 したがって、省略基準については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに注意が必要です。

健康診断実施後の事業者の具体的な取組事項

1. 健康診断の結果の記録

健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなくてはなりません(安衛法第66条の3)。

2. 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取

健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません(安衛法第66条の4)。

3. 健康診断実施後の措置

上記2による医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません(安衛法第66条の5)。

4. 健康診断の結果の労働者への通知

健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません(安衛法第66条の6)。

5. 健康診断の結果に基づく保健指導

健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません(安衛法第66条の7)。

6. 健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告

健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(安衛則44条、45条、48条の健診結果報告書については、常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診の結果報告書については、健診を行った全ての事業者。)(安衛法第100条)。 なお、この定期健康診断の報告は、2025(令和7)年1月1日より、電子申請が義務化されますので、ご注意ください。

健康診断の費用負担等

1. 労働安全衛生法に基づき実施される健康診断の費用

労働安全衛生法の義務に基づいて実施される健康診断の費用は、事業者が負担すべきものです。 再検査費用やオプション検査費用などは、事業主が負担をした場合、社会保険上の報酬に該当する可能性が高いものとなります。

2. 一般健康診断の受診時の賃金支払い

受診時に要した時間の賃金は、労使協議により定めるべきものですが、 受診に要した時間の賃金は事業者が支払うことが望ましいとされています。

おわりに

健康診断やストレスチェックなど、働く人たちの健康を維持することは、事業主にとって、とても重要な責務となります。従業員の心身の健康を維持して健やかに働いてもらう環境作りについて考えるきっかけになれば幸いです。

EPコンサルティングサービス/社会保険労務士法人EOSでは、給与計算や労働・社会保険手続き、労務トラブル等、様々なご相談に対して対応させて頂いております。 日々の業務で何か気になることがありましたら、お気兼ねなく、お問合せ頂ければ幸いです。

Rie Sumishita

HR Team Manager Certified social insurance labor consultant

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