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今年度も残り2か月、「最終確認」と「準備」はできていますか!?

Payroll accounting, social insurance, personnel and labor affairs

2025年もあっと言う間に1か月が経過しようとしています。

人事部の方をはじめ、人事労務関係の仕事に携わっている方は、昨年12月の年末調整終了後、法定調書や給与支払報告書の作成及び提出業務に追われながら1月を過ごされたのではないかと思います。また、1月以降は、4月以降の昇給や場合によっては組織編成、また新卒受入れのための準備等、もう少しバタバタとした日々が続くのではないかと思っています。

そこで今回は、この時期にやるべきことであって、忘れやすいものを「最終確認」と「準備」という視点で見てみたいと思います。

最終確認 ―年5日の年次有給休暇の取得―

まずは、「最終確認」として、「年5日の年次有給休暇の取得」について、見てみたいと思います。

この「年5日の年次有給休暇の取得」は、2019年4月からスタートした、いわゆる働き方改革関連法の1つとなります。スタート当時は、非常にインパクトの強いものだったかと思いますが、その後、皆様ご自身、そして、皆様の企業で働いている方々は、年5日間の年次有給休暇を取得することが出来ていますでしょうか。

(1)対象者

折角ですので、まずは、この「年5日の年次有給休暇の取得」の対象者について整理してみたいと思います。この制度の対象者は、単純に「年次有給休暇が10日以上付与される労働者」となり、当然、対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。

(2)「年」の考え方

次に「年5日」の「年」の考え方となります。この「年」の考え方を誤ってしまいますと、5日取得できていない方が多くいるかもしれませんので注意が必要です。 この「年」は、「年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内」とされていますので、4月1日一斉付与を行っている企業では、翌年3月31日までに、年次有給休暇が10日以上付与されている労働者について、5日以上、付与しなければならなくなります。つまり、このようなケース(4月1日一斉付与)では、あと2か月で最大5日の年次有給休暇を付与しなければならないこととなります。

(3)基本的なルール

次に、基本的なルールとなりますが、この年5日取得については、使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければならず、また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。なお、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできませんので注意が必要です。

(4)対応方法

では、対応方法ですが、先述の通り、4月1日一斉付与を行っている企業では、残り2か月しかありませんので、早急に①対象者(有給5日未取得者)の洗出しの実施、②その者に上長(又は人事部)からコンタクト、③現時点における有給取得予定日の確認、という流れでアクションを起こす必要があります。 この年5日の取得は、1名でも取得できていない場合には、労働基準法に違反することになりますので、年度の最終確認として、忘れずに行うようにしてください。

準備 ―時間外・休日労働協定の更新―

次に「準備」ということで、「時間外・休日労働協定の更新」についてです。「時間外・休日労働協定の更新」というと聞きなれない方もおられるかと思いますが、いわゆる「36(サブロク)協定の更新」となります。

多くの企業では、この時間外・休日労働協定の有効期間を4月1日から翌年の3月31日までに設定しているケースが多いかと思いますので、次の時間外・休日労働協定の「準備」が必要となる時期を迎えているのではないかと思います。

(1)時間外・休日労働協定とは

まず、なぜ時間外・休日労働協定が必要なのか、確認してみたいと思います。労働基準法では、労働時間の枠を週40時間、1日8時間とし、さらに毎週1回の休日が設定されています。つまり、6日間(週7日-休日1日)の間に、1日8時間を上限として労働時間を40時間まで割り振ることが可能というのが労働基準法の基本的な考え方となります。言い方を変えますと、これを超える労働は労働基準法に違反することとなるのですが、「時間外・休日労働協定」を締結し、労働基準監督署へ届出ることによって、週40時間、1日8時間を超えて、そして休日に労働させた場合であっても、労働基準法に違反しないという免罰的効果が発生することになるため、非常に重要な手続きとして認識されています。

※ただし、労働者に対し、時間外労働や休日労働を実施させるためには、労働契約・就業規則上の規定が必要となります。

(2)締結当事者

次に、会社は誰とこの時間外・休日労働協定を締結する必要があるのか、ということです。締結相手が間違っていては意味がありませんので、注意が必要です。時間外・休日労働協定の締結当事者は、①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合、②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者、との締結が必要となります。 そのため、自社に労働組合があるか否か、ある場合には労働者の過半数で組織されているか否かの確認が必要となります。

(3)対応方法

多くのケースでは、4月1日からの1年間を有効期間にしているかと思いますが、必ずしも、そうではないケースもありますので、まずは有効期間の確認を実施してみてください(もしかすると締結・更新を忘れていたという場合もあるかもしれません。)。その上で、4月1日から有効期間がスタートしているようでしたら、内容の確認(変更の有無)、締結当事者の確認、締結、そして労働基準監督署への届出という形で進めて行く必要があり、必ず、有効期間の初日の前日までに提出を行ってください。もし、提出が遅れた場合、その間に時間外・休日労働が行われれば、その時間外・休日労働は労働基準法に違反することになってしまいます。

おわりに

さて今回は、この時期に注意すべきものを「最終確認」と「準備」という2つの視点でみてみました。日々の業務のみならず年次業務等に対応していますと、どうしても、1つ2つ、抜けてしまうものが出てきてしまいます。今回取り上げた、年次有給休暇の年5日取得、時間外・休日労働協定の更新、というものはその最たるものかもしれませんが、コンプライアンスという視点では、非常に重要なものかと思います。

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Rie Sumishita

HR Team Manager Certified social insurance labor consultant

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