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【人事労務8月号】【統計情報等】「長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果」について

2019(平成31)年4月1日以降、労働時間に関連する多くの法改正が実施されてきました。例えば、①時間外労働の上限規制、②年次有給休暇の確実な取得(年間5日取得)、③労働時間の状況の客観的な把握、④フレックスタイム制の拡充(清算期間の拡充)等が挙げられます。さらに、2023(令和5)年4月1日からは、中小企業の「月60時間超の法定時間外労働の割増賃金率」が引き上げられることになります。

現在、「労働時間管理」は、企業の労務管理における最も重要な部分とされ、労働基準監督署が実施する定期監督や臨検においては、必ずと言って良いほど、労働時間(時間外労働の状況やそれに対する割増賃金の支払い、記録の方法や保管等)についての確認が実施されます。

先日、厚生労働省より「長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果」が公表されましたので、以下での、その公表結果とともに、 2023(令和5)年4月1日からスタートする、中小企業の「月60時間超の法定時間外労働の割増賃金率」について、説明させて頂きます。

監督指導結果<監督指導結果のポイント>

<監督指導結果のポイント>

✔︎ 対象事業場:

①各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり 80 時間を超えていると考えられる事業場
②長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場

✔︎ 監督指導の実施事業場数:32,025事業場

✔︎ 主な違反内容(監督指導実施事業場のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場)

①違法な時間外労働があったもの :10,986事業場(34.3%)
 うち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
  月 80 時間を超えるもの: 4,158 事業場(37.8%)
  うち、月 100 時間を超えるもの: 2,643 事業場(24.1%)
  うち、月 150 時間を超えるもの: 562 事業場( 5.1%)
  うち、月 200 時間を超えるもの: 121 事業場( 1.1%)
②賃金不払い残業があったもの : 2,652事業場( 8.3%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの : 6,020事業場(18.8%)

✔︎ 主な健康障害防止に関する指導の状況(監督指導実施事業場のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場)

①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの :13,015事業場(40.6%)
②労働時間の把握が不適切なため指導したもの : 5,105事業場(15.9%)

監督指導結果<監督指導により把握した実態>

(1)時間外・休日労働時間が最長の者の実績

監督指導を実施した結果、違法な時間外労働があった10,986事業場において、時間外・休日労働が最長の者を確認したところ、4,158事業場で1か月80時間を、うち2,643事業場で1か月100時間を、うち562事業場で1か月150時間を、うち121事業場で1か月200時間を超えていた。

(時間外・休日労働時間が最長の者の実績(労働時間違反事業場に限る))

(2)労働時間の管理方法

監督指導を実施した事業場において、労働時間の管理方法を確認したところ、2,617事業場で使用者が自ら現認することにより確認し、12,167事業場でタイムカードを基礎に確認し、6,249事業場でICカード、IDカードを基礎に確認し、9,715事業場で自己申告制により確認し、始業・終業時刻等を記録していた。

(監督指導実施事業場における労働時間の管理方法)

月60時間超の法定時間外労働の割増賃金率

2023(令和5)年4月1日から、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になり、下記のような取扱いとなります。

また、具体的な算出方法は、次の通りとなります。

時間外労働の集計は、起算日からの積上げとなります。そのため、上記カレンダーの色に基づき、下記の通りとなります。

・白色部分 (60時間以下)→ 割増賃金率25% → 60時間分の60時間以下に対する割増賃金
・緑色部分 (60時間超) → 割増賃金率50% → 10時間分の60時間超に対する割増賃金
・オレンジ色部分 (法定休日労働)→ 割増賃金率35% → 10時間分の法定休日労働に対する割増賃金

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Social Insurance Consulting Firm EOS Firm News Vol. 131

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